たくなくの雑記帳

思ったことを書き留める雑記帳

2050年の世界ってどんなのだろう③:民間レポートからみる2050年

なんとなく書き始めて3回目です。なかなか楽しい。

前回はこちら。

今回はシンクタンクなんかの民間企業が出している未来レポート的なやつをナナメ読みしてみます。

2050年のニッポン(2017, みずほ情報総研

こちらは2017年12月に開催された、日経2020フォーラムにおける発表資料のようです。いかにもシンクタンクっぽい、色々詰め込まれた内容です。

冒頭で、こんな全体構成が説明されています。

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引用:2050年のニッポン ~課題を乗り越え、輝き続けるために~(p.2)

前回触れたような人口変動はもちろん、様々なことが変わっていくよということに触れ、その後「無策であと30年を過ごしたらどうなるか」という悲観的なシナリオを述べ、そうならないために何をしていけばいいか、という構成です。わかりやすい。

2050年の世界動向

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引用:2050年のニッポン ~課題を乗り越え、輝き続けるために~(p.5)

ここはまさに前回触れた通りですが、2050年時点の世界を見ると、人口・経済ともにアジアがその存在感を高めています。

人口としてはアフリカも増えているところですが、経済的にはもう少し時間がかかる、というのが2050年の読みになっているようです。

そうした世界動向の中、日本は特にどんな様子になるかというと、様々な技術革新によって色々な変化が起こるとされています。そのうちの一つに挙げられているのが、以下のようなモビリティ革命

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引用:2050年のニッポン ~課題を乗り越え、輝き続けるために~(p.10)

第1回の国土グランドデザインでも触れられていたように、都市内交通および都市間交通の利便性向上によって、少ない都市施設を広く使うようなコンパクトシティの構想が検討の前提になっているようです。

モビリティ革命のポイントとしては、

  • 自動運転により、車内は「過ごす」空間となる
  • シェアリングが容易となり、所有の必要性が低くなる(≒共用化が進む)
  • 電池性能の向上により、災害時電源などの機能を担う

なんてことがあります。これまでは「1台100万200万を10年使う」ような発想でしたが、そんな一括購入が珍しくなり、タクシーのような随時利用であったり、いわゆるサブスク型の定額サービスの利用になったりすると言われています。

2050年まで何もしなかったら?

続いては、危機前提の共有ということで2050年の日本が抱えてしまいそうな問題に目を向けます。

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引用:2050年のニッポン ~課題を乗り越え、輝き続けるために~(p.15)

その代表的なシナリオを1枚にまとめたものがこれです。

4つの問題がそれぞれ描かれているように見えますが、これらは結局のところ「高齢化社会の進展、就業人口の減少」から派生してくるような内容です。

  • 働き手が減る産業を支えるべくAIやロボットを活用するが、それらの活用格差で生きづらさが問題になる
  • 就業人口の減少から税収減を招き、インフラ整備財源が確保できなくなる
  • 高齢化による医療費増の反面、税収減で国民医療が崩壊する
  • そういった「悪い社会」により、人材が海外流出してしまい、さらなる産業の空洞化を招く

といった具合です。

残念ながら、日本の高齢化や就業人口の減少自体はもはや止めようがないものであるため、それを認めながらこれからの日本に何ができるのか、ということを考えなければなりません。

2050年の目指すべき姿は?

このスライドで、みずほ情報総研が提案しているのがこういったアプローチです。

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引用:2050年のニッポン ~課題を乗り越え、輝き続けるために~(p.24)

日本人が働くということを支え、かつ生きてける社会基盤を保ち続けるというのがその主旨です。

前者はさておき、後者はまさに国土グランドデザイン2050でも述べているような内容ですね。

中でも興味を引いたのは、

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引用:2050年のニッポン ~課題を乗り越え、輝き続けるために~(p.24)

という「エイジレス・ジェンダーレス社会」の部分でした。

2050年のネガティブシナリオは要するに、「日本人が活力を失っている」ことに起因するので、そこに活力を与えられるような社会を考えていこうという話ですね。

具体的にここで述べている社会の良し悪しがどうというわけではなく、こうしたみずほの "提案" に対して、僕ら自身はどんな生き方、どんな社会を望むのかというのはじっくり考えてみたいところです。

人生100年時代というキーワードはもはや目新しいものではなくなりましたが、それの意味するところが実際何であるのかという実感までは、まだまだ持てていないと思います。

このみずほの提案も「理論上はこういうことになる」という話ではあるものの、本当にこれが望むべき世界なのかはこの発表を通じて、むしろ批判を望む、もっといい内容でぶつかってくる人を望むようなところでもあるのでしょう。

 

未来社会構想2050(2020, 三菱総合研究所

続いてもう1つ国内シンクタンクのレポートを見てみます。こちらは三菱総研で、2020年の内容です。

こちらも基本的に話の流れは同じですが、ネガティブシナリオをそこまで具体的に話してはいないのがみずほとの違いです。

2050年に向けた6つの潮流

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引用:「未来社会構想2050」の概要 ~2050年に向けての世界の潮流と日本が目指すべきこと~(p.3)

三菱総研は2050年を考える前提として、この6つの潮流を挙げています。

特徴的なのは「②覇権国のいない国際秩序」のところですね。
中国やインドの台頭という意味でアジア中心な記載であるものの、だからといってアジアが覇権を握るわけではないというのは少し書き口が違うような印象です。

図の構成としてもそうなっているように「①デジタル経済圏の台頭」が三菱総研における中核的な前提になっているようです。
「デジタル経済圏」の概念が詳しく述べられていないのでよくわからないところもありますが、これまで言語や居住地が自然な壁となって国家などのコミュニティを形成してきたところ、デジタル技術の発展に伴いそれを必ずしも壁としない世界がやってくるということなんでしょうね。

豊かで持続可能な社会の実現

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引用:「未来社会構想2050」の概要 ~2050年に向けての世界の潮流と日本が目指すべきこと~(p.7)

そんな前提の中で、三菱総研の提言がこちら。

これだけだと端的すぎてわからないので、個別スライドでもう少し見てみます。

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という感じで、消費ニーズやライフスタイルなど、人の働き方や生き方が変わるよねってことを提言しています。

そういった人たちが生きる場所としてのコンパクトシティも出てくるので、やはり前提の置き方は多少違いつつも、三菱総研が提言するところもみずほのそれと大きく異なるものではないということがわかります。

未来社会構想2050 全文

ここまで引用してきたのはあくまで概要の資料でした。全文はこちらですので、興味を持った方はぜひ読んでみてください。

2050年の世界(2013, PwC

さてここまでは日本のシンクタンクでしたので、最後は外資系でいってみましょう。

先ほどの2つはいずれも提言の形になっていましたが、こちらは淡々とした調査結果および予測に留まる内容です。

2050年の経済世界

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引用:2050年の世界 BRICsを超えて:その展望・課題・機会(p.2)

最初に経済観点で見た場合のサマリが載っています。

1位中国、2位米国というのはよく見る並びではありましたが、2050年では日本がブラジルを抜いて4位というのはこうして見ないとなかなかわからない内容ですね。

2050年がアジア中心の経済というのはこれを見てもわかりますが、13位にナイジェリアが食い込んできているあたり、アフリカの足音が感じられます。

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引用:2050年の世界 BRICsを超えて:その展望・課題・機会(p.11)

ただ、国家レベルの経済規模では中国やインドが台頭するとはいえ、国民一人あたりではまだまだ先進国に及ばない状況が続くようです。

気候変動問題について

このレポートの基本的な構成は、

  • 2050年の経済・人口予測
  • 予測の前提となる気候問題認識
  • 今後のビジネス機会

といった感じになっています。

気候問題は要するに、SDGsに向けたモチベーションとなるものですが、基本的な考え方は「気候問題を無視していては、様々な活動が阻害され、かえって低成長な歩みになるよ」というものです。

中国などの新興国では、日本も過去に経験したように、投下資本利益率が低下する可能性がある。

最先端として設定した技術の進歩が失速する可能性がある。
(略)
この主張はICTの目まぐるしい変化や、ナノテクノロジーやバイオテクノロジーなどの進歩が今後数十年間に加速する可能性と相容れない。

 というように表現されています。
新興国はわかりやすく発展の足かせになるし、先進国でも技術開発の遅れなどを生むかもねというような危機意識となっているようです。

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引用:2050年の世界 BRICsを超えて:その展望・課題・機会(p.15)

こちらが気候問題への対処度合いを最下段の気温上昇で端的に示したものですが、国連が目標とする取り組みが全て想定通りに推移しても、2050年までに2℃は上昇してしまうだろうというのが右側の緑化成長シナリオです。

一方で全く何も考えないというのが左側で+6℃、その中間でレポートとしても妥当な位置付けとなっているのが+4℃の漸次緑化シナリオのようです。

 「緑化成長」シナリオよりやや現実的ながら、依然として困難なシナリオが「漸次緑化」シナリオである。これは、エネルギー強度の改善が2000年以降の平均水準の約2倍になること、中国やインドで石炭からガスへの移行が大幅に進み、さらに2050年までに世界中で再生可能エネルギーへの移行が進むこと、同時に2021年以降はCCS(二酸化炭素の回収・貯蔵)が段階的に導入されることを前提としている。
(略)
このシナリオが実現しても、世界の気温は最終的に摂氏4度前後上昇し、経済、社会、環境に大きな打撃を与える可能性はあるが、これまでどおりの企業活動を継続した場合に起こり得る長期にわたる壊滅的な結果には少なくとも、至らないであろう。

こういった気候問題の対応はどうしたってコストがかかり、一見して非経済的に見えるものの、最終的に巡り巡って経済発展を阻害するので目を逸らしてばかりもいられない内容です。

今後10年のビジネス機会

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引用:2050年の世界 BRICsを超えて:その展望・課題・機会(p.16)

最後にこのレポートでは、今後10年における新興市場でのビジネス機会に触れています。

基本的には現地の商習慣などにうまく合わせる必要があるとしながらも、基本的には強力なブランドや事業基盤を持つ企業に機会があるという読みですね。

ここでも医療や教育に注目がありますので、日本国内の医療・教育産業はもちろんのこと、世界的な動向にも注視してみるといいのかもしれません。

The World in 2050

読みやすさの点でつい日本語レポートを読んでしまいましたが、PwC外資系企業なのでもちろん原文は英語です。

元々は The World in 2050 の中にあるコンテンツで、2006年に最初のものが公表されてから順次アップデートされているもののようです。

 

まとめ

最初の2つは日本、最後の1つは世界を対象としたレポートでしたが、前提とする世界観が異なるため、レポートの編成が全然違っていますね。

世界的には成長が見込まれているものの、依然として先進国/新興国の格差は大きく、加えて気候問題への対処が求められる難しさがPwCレポートでは述べられていましたが、日本のレポートでは「社会基盤は整っているものの、人口が減っていく」という前提があるため、いかにそれをアップデートしていくかという視点になっています。

改めて、日本という国が世界的にみれば恵まれているということがわかりますが、そういう成熟性ゆえに持っている悩みがあるということを改めて理解しました。

とりわけ、人生100年時代が避けられないようなこれからにおいて、どういった人生を望むのかは改めて考えたいと思ったことと、その準備の時間はまだ30年ほどあるというのは救いのある話でした。

次はアレですね、2050年に向けて実現が模索されるテクノロジーの話をします。夢を見ようの回。

 

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