2050年の世界ってどんなのだろう⑤:宇宙エレベータ
5回目です。前回はこちら。
前回に引き続き、テクノロジーでみる2050年、それも夢物語に感じるような内容の話です。
宇宙エレベータ
皆さん宇宙エレベータは知っているでしょうか。軌道エレベータなどとも言ったりしますが、早い話が宇宙まで昇っていけるエレベータのことです。
文字で説明するのもあれなので、ここでイメージ画像をひとつ。
このように、宇宙まで伸びるエレベータがあって、昇降機(ゴンドラ)に乗っていれば宇宙までいけるというやつです。
画像の引用元である 宇宙エレベータ建設構想(季刊大林) は、2012年に公表されたもので、大林組は「2050年の運用開始」を目指して基礎研究から宇宙エレベータの建設を考えているようです。
2041年には大林組が創業150年を迎えますので、2050年はそれに近い、まさに大林組の歴史に刻む大事業に位置付けられているのでしょう。
大林組と宇宙エレベータ
そのように実現に向けた活動を続けている大林組ですが、宇宙エレベータに関する構想を何度か公表しています。
2012年 季刊大林53号:「宇宙エレベータ」建設構想
先ほども紹介しましたが、大林組が対外的に宇宙エレベータのことを大々的に公表したのがここからです。
大本は雑誌ですのでこのネット記事は簡易版ですが、その全編がPDFで公開されているので気になる方はじっくり読んでみてください。
宇宙エレベータの概要とか、メリットのような単純な話だけでなく、「なぜ宇宙エレベータなのか」といったことや、「実現に向けた課題」など、より踏み込んだ内容が見開き16ページにおよぶボリュームで壮大に語られています。
宇宙エレベータが地上と接する部分、その発着点をアース・ポートと呼びますがそのイメージがこちらです。
詳細は割愛しますが、宇宙エレベータは物理的な制約から赤道上に建てるのが望ましいとされています。そのこともあり、このアース・ポートもそれを意識した南国な感じで描かれていますね。
天国にいちばん近い島、なんて文句がありましたが、宇宙エレベータが建設されれば最寄りの島が「宇宙にいちばん近い島」なんて呼ばれたりしそうです。
2016年 大林テクノフェア2016:サステナブルエネルギー05 宇宙と地上をつなぐ
創業125周年となった2016年に、大林組が目指す未来像や、その実現に向けた技術開発の内容を披露した大林テクノフェア2016が開催されました。
大きなテーマとしては、
の4つがあり、サステナブルエネルギー5番目のテーマとしてこの宇宙エレベータが取り上げられていました。
宇宙エレベータのメリットとしては、「ロケットに比べて輸送コストが低く済む」というものがありますが、それも要するに「宇宙と地上をつなぐ」というものに繋がります。
21世紀は宇宙の時代なんて言われたりもしますが、今後宇宙開発で宇宙との出入りが活発になる場合、こうして宇宙と地上が身近になることはとても重要なことですね。
2018年 宇宙利用の将来像に関する懇話会:宙を拓くタスクフォース 第2回
総務省が主管する様々な研究会の1つに、宇宙利用の将来像に関する懇話会というものがあります。
その中で、2018年に行われた第2回会合で大林組が宇宙エレベータの内容でプレゼンをしています。
具体的にどういった言及かはさておき、この中で実現スケジュールの話が出てきます。
これを見ると2031年にはケーブルの敷設がはじまっており、18年かけて全長9万6000キロまで延伸、補強していく計画のようです。
また、そのケーブルを受けるためのアース・ポートは2025年着工となっており、あと4年ということになります。マジか、という感想ですね。
このスケジュール自体は2012年の計画公表時ですでに存在していましたが、そこから6年後になっても当時のものと変わらず「2025年アース・ポート着工」「全体工期25年」となっています。見直していないだけなのか、順調に推移しているのか...。
ちなみに、この「宙を拓くタスクフォース」ですが、全8回の会合を経て報告書をまとめています。
これはこれで夢あふれる報告書でした。宇宙時代を感じる。
宇宙エレベータ実現への課題
大林組の計画としてはもうすぐ、といったところではありますが、一般論としては実現に向けては様々な課題があるとされています。
ケーブル強度の実現と量産
最も代表的なものはこの話ですが、全長9万6000キロに及ぶ巨大な構造物に耐える素材の調達目処がつかないとかそんな話です。
理論上はカーボンナノチューブがそれに該当するようですが、現実に宇宙エレベータ素材として運用可能かという話や、必要量を量産できるかという話があります。
ただこんな話を総務省の前で公表するということは、技術的なところ自体はそれなりの手応えがあるってことなんでしょうね。
昨年、2020年6月にはこんなプレスリリースを出していましたが、「実際にケーブルを長期間宇宙に晒したらどうなるか」っていう観点で実験を進めているようなので、本当に素材としての運用性を検証しているようですね。
運用体制
技術的な問題以上に大きな問題となるのがこちらの運用体制です。
かつてないほど巨大な構造物であり、宇宙と地上を結ぶ極めて重要なインフラとなるものであるため、テロ対策が必須となります。
とはいえ、日本の大林組が作ったからといってそんな重要なものを日本の管理100%で行うというのは考えづらく、結局は国際的な運用母体をもって運用していくものと思います。
そもそも、赤道上という時点で他国の協力なくしては実現できませんしね。
具体的なテロ対策としては、人を対象とするものは現在の国際空港の延長で考えればいいのかもしれませんが、航空機テロに対する対策が特に重要だと言われます。
基本的には突っ込まれたら致命傷だと思いますので、「アース・ポートの周辺50kmに許可なく侵入した航空機は即撃墜」とかそのレベルもあり得るような話みたいです。
米ソの争いや、米中の争いなど、地球上における大国間の争いは近代以降ずっと続いていますが、宇宙時代においてはそういった地球の中での小競り合いはなくなっていくのでしょうか。
ある意味、この宇宙エレベータが誕生すれば、その存在が平和の象徴となるのかもしれません。
その他、宇宙エレベータに関する内容
ここまでは大林組の計画を主軸にみてきましたが、他にもいくつか宇宙エレベータっぽい内容は見つかります。
一般社団法人 宇宙エレベータ協会
そんなもんあるんかいなと思いましたが、2008年にこんなものが設立されていたようです。
大林組もこの協会のスポンサーになっているようですが、活動としてはやや低調な印象があります。
宇宙エレベータ座談会
座談会メンバーに元宇宙飛行士の山崎直子さんや、ガンダムの富野監督がいてなかなかおもしろい。
「機動戦士ガンダム」などのアニメ監督・演出家として著名な富野由悠季 氏は、次のように宇宙エレベーターに関して持論を述べた。
「(宇宙エレベーターは)まだ夢物語的な視点もあるが、すでに人類は月まで到達し『認知革命』が始まっている。宇宙から人類が地球を振り返れば、太陽系を生活圏とすることも不可能ではないだろう。ぜひ若い人にも宇宙エレベーターの課題を真剣に考えてもらいたい。
ロケットは乗り物としては危険なので、宇宙エレベーターの考え方も悪くはないと思う。これを起点に、今後100年をかけて、宇宙進出の意味や方法論などについて、具体的な研究や実証を行っていく必要がある」
宇宙エレベータとの出会い
僕が宇宙エレベータと出会ったのはスーパーファミコンのゲーム、ガンハザードが最初でした。
色々な名言が飛び出していることで有名。とてもニッチなサイトを見つけてしまった。深い愛を感じる...。
で、話を戻すとやってたのが小学生の頃なのでたぶん1998年とかそのへんだと思いますが、「2024年に宇宙エレベータが建設された世界」を描いた作品です。作中では軌道エレベータと呼ばれてます。
宇宙への低コスト輸送や高効率の太陽光発電など、平和利用を目指して国連(のような団体)主導で作られたものの、その後いろいろあって使われなくなり、悲しい「平和の象徴」になったとかそういう扱いを受けていました。
ゲームとしても好きでしたし、この世界観がなかなかよくできていて好きだったので、とても印象的でした。そんな入りだったので、あくまでゲーム内の存在だとは思っていましたが、大林組の発表で一気に現実のものと認識することとなり、感動したのを覚えています。
このゲームのように、2024年完成とはいかないようですが、現実のものとなるなら、またこのゲームのような悲しい結末にならないなら、それを期待したいところです。
まとめ
宇宙の話題となるとどうしても夢物語感が出てきますが、民間企業でそれを掲げるところがあるあたり、それなりに現実味のある話なんですかね。
いずれにせよ、2050年に実現するならこいつに乗って宇宙に行けそうな気がするので、ぜひ大林組には期待したいところです。
(個人的にはリニアの東京―大阪、全線開通が2045年なのでそれからすると非現実感がすごい...🙄)
延々続けててもあれなので、次回の核融合で最後にします。夢のエネルギーだぜ。
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